小説のスピード感
「〜しとってん!」
『やば』
「やばない?!」
『やばいな』
括弧を入れて30文字ものやり取りが、
目の前を通り過ぎた今時の若い二人が乗った自転車から聞こえてきた。
わずか2秒。30文字が2秒。
会話に加えて、そのときの周囲の状況や彼らの心境を描写したら、100文字ではきかないだろう。
一般的な小説(文庫本)の1ページ当たりの文字数を、40文字×17行で680文字とする。
薄めの文庫本として、680文字×約200ページで136,000文字。
先の2秒の描写が100文字とすると、一冊当たりの時間は2720秒。
時間に換算しておよそ0.75時間、つまり45分である。
単純計算で45分しか描けないはずなのに、
映画化されると2時間半の長さになり、
ある小説は最初と最後で10年もの月日が経っていたりする。
実際の45分程度に起こる出来事など、数ページで済んでしまうのだ。
なんという速さだろう。
逆に言ったら、この世はなんてゆっくり流れているんだろう。
世界中の人々が小説並みのスピード感を持ったら、とんでもないことになるんじゃないかしら。
みたいなことを考えている帰りの電車の中。
鈍行に感じてしまう。